君たちはどうググるか

#ほぼ週刊ググレカス
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「ググる」という言葉がもはや古語になりつつあります。

拙著やブログではAI時代の教師の情報処理のあり方として「授業準備3.0」というコンセプトをご紹介していますが、そもそもAI時代に急激に突入した2023年と、それ以前の言わば「Googleの時代」では何が変わったのでしょうか。ご自分で、実感を伴って理解されていますか?

このブログの今月のサポーターの皆さんにお礼を申し上げます:
Li02380さん、Amiさん、Cocoさん、ゴンタ=ミチさん、ナゾの冒険家さん、ヒロパンマンさん、びびあんさん、ミニヤンさん、ありがとうございます!🎉

「伝統的な」検索エンジンで我々がしていたこと

従来、私たちは特定の情報や答えを得るためにキーワードでGoogleなどの検索エンジンを使用し、「ググる」という行為をしてきました。しかしChatGPTのようなAIチャットボットの出現で、人間が自然言語で質問し、それに対する直接の回答をAIから自然言語で受け取ることが可能になりました。ユーザーは関連情報を自分で絞り込む必要がなくなり、より直接的かつ対話的な情報アクセスが可能になっています。

実は、これまで多くのユーザーにとっては「ググる」行為ですら難しかった、というのが現実です。Googleの検索結果は何千という玉石混交の情報の洪水です。その中から本当に欲しかった情報を見つけ出すためには、情報の海を泳ぎ切るだけの根気強さだけでなく、その価値を見極めるための膨大な背景知識と経験、無関係な情報を瞬時に切り捨てるための判断力などが必要でした。

AIと情報検索の新しいパラダイム

このように従来は検索エンジンのユーザーに対する要求水準が非常に高かったわけですが、AI化によってこの敷居が大きく下がりました。ChatGPTやBing ChatのようなAIチャットボットはユーザーからの質問の文脈やニュアンスを理解し、要求されている情報を特定し、関連性の高い内容を提供することができ、ユーザーが理解できない場合はさらに対話を続け、視点を変えたり、やさしい言葉に言い換えて説明することができます。このおかげで、専門知識のない分野に関する調査でも、あるいは十分な背景知識を持っていない場合でも、ユーザーは必要な情報を自分に理解可能な語彙で入手することができます。また、高度な検索のための技術や、多数の検索結果の取捨選択が不要になるため、情報検索プロセスがより効率的で敷居の低いものとなりました。

ただし注意が必要なことは、AIチャットボットが提供するのは情報検索の結果ではない、ということです。例えば、ChatGPTはあらかじめ学習した大量のテキストデータを元に、ユーザーからの質問やコメントに対する回答を生成します。また、Bing Chatは検索エンジンを使用しますが、最終的な回答はAIが生成したものです。回答の文章を「生成」するのであって、「検索してみつけた答えを返す」のではありません。詳しくは「教師のためのChatGPTガイド」第1章の「ChatGPTに関するよくある誤解」で紹介しています。

ユーザーから見れば質問とその回答の繰り返しでしかないので、キーワード検索とAIチャットボットの違いがわかりにくいのは確かです。しかし、後者は検索結果の羅列から一歩進んだもので、回答として有益な新たなテキスト情報を生成しているということです。AIによって人間の創作活動が劇的に効率的になったと言って差し支えないでしょう。

生成AIのマルチモーダル化

さらに、これらのAIチャットボットではテキストだけでなく画像や音声を扱うマルチモーダル化が急速に進んでおり、テキストから音声や画像を生成したり、逆に音声や画像からテキストや別の音声、画像などを生成することが誰でも可能になりました。

例えば、ユーザーが美術作品の写真をAIに提供すれば、AIはその作品の作者や歴史的な文脈を説明したり、同じ作風で新たな作品の画像を生成したりできます。また、料理中に音声で「この料理に合うワインは?」と問いかけ、AIにその料理と相性の良いワインを提案させることもできます。

このような発展は「ググる」という概念を大幅に超越したと言えるでしょう。従来のキーワード検索だけでは成し得なかったことが、いまやAIとの対話で誰もが容易に実現できます。2023年にAIチャットボットで何が可能になったかを一言で言うならば、それは「問題解決」でしょう。これまで人々が情報を検索していたのは、問題解決のため、あるいはその手がかりを得るためでした。それが、上手くいけば一気に解決まで導いてくれるようになったということです。これは学術的な研究からクリエイティブな作業まで、多くの分野で新たな可能性を切り拓く革新です。

AIと教育

教育の観点から言えば、AI技術の進歩は学習の方法そのものを変えてしまいました。学習者は静的なテキスト情報を受動的に解釈していた頃と比べてはるかにインタラクティブな対話をAIと行い、その理解を深めることができます。教師の心配をよそに、AIを活用できる学習者たちは自分の進度や関心に合わせてカスタマイズされた教材を次々と生成し、どこまでも深く学んでいくことが可能になりました。この点についても、詳しくは拙著をお読みいただければ幸いです(第2章「ChatGPTで学びが変わった」)。


以上のように、AIによって問題解決とそのための情報検索の方法が質的に大きく、そして急激に(2022年末から6か月程度で)変化しました。そして以前のように問題解決の基本動作として「ググる」必要性も激減したというのが、本稿冒頭の1行が意味するところです。読者の皆さんには、ぜひこの時代を謳歌するのに十分なデジタル・リテラシーを身に着けていただきたいと思います。(第3章「3.5 教師はどうすべきか — AI活用のベスト・プラクティス」)

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